「口約束で仕事を受けていたら、報酬が支払われなかった」「契約内容と違う業務を求められた」。フリーランスの契約トラブルは、実は珍しくありません。トラブルを防ぐ最大の武器が「契約書」です。
この記事では、フリーランスが知っておくべき契約書の種類、盛り込むべき項目、作成時の注意点を詳しく解説します。契約書を「面倒なもの」ではなく「自分を守る盾」として活用しましょう。

業務委託契約の2つの種類
フリーランスが結ぶ「業務委託契約」は、法律上は以下の2つに分かれます。それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。
請負契約
「成果物の完成」を約束する契約です。Webサイト制作、ロゴデザイン、記事執筆など、完成品を納品する仕事が該当します。
- 報酬は成果物の納品・検収後に発生
- 成果物に欠陥(契約不適合)があれば修補・損害賠償の責任を負う
- 仕事の進め方は受注者の裁量に任される
準委任契約
「業務の遂行」を約束する契約です。コンサルティング、システム保守、事務代行など、一定期間の稼働を提供する仕事が該当します。
- 報酬は稼働時間や工数に応じて発生
- 善管注意義務(プロとして適切に業務を行う義務)がある
- 成果物の完成義務はない
自分の仕事がどちらに該当するかを把握しておくと、契約書のチェックポイントが明確になります。
契約書に盛り込むべき10の項目
- 契約当事者:発注者と受注者の氏名・住所
- 業務内容:具体的な作業範囲と成果物
- 報酬金額と支払い方法:金額・支払日・振込先
- 契約期間:開始日と終了日(自動更新の有無)
- 納期・スケジュール:中間納品やマイルストーンがあれば記載
- 検収条件:納品物の確認方法と修正回数の上限
- 知的財産権の帰属:著作権や特許権が誰に帰属するか
- 秘密保持義務:業務上知り得た情報の取り扱い
- 契約解除の条件:途中解約の手続きや通知期間
- 損害賠償の範囲:上限額を設定しておくのがポイント
業務内容はとにかく具体的に
「Webサイト制作」とだけ書くのではなく、「トップページ1ページ+下層ページ5ページのコーディング。デザインは別途支給されたPSDデータに基づく。レスポンシブ対応含む」のように、具体的に記載しましょう。
業務範囲があいまいだと「ここまでやってほしい」「それは契約外です」というトラブルの原因になります。
知的財産権は特に注意
デザインや記事などの著作物は、何も取り決めがなければ著作権は制作者(フリーランス)に残ります。ただし、多くの契約では「納品・検収完了をもって著作権は発注者に移転する」と定めています。自分のポートフォリオに使いたい場合は、その旨を契約書に盛り込んでおきましょう。契約書の作り方については以下の記事が参考になります。



フリーランス新法(フリーランス保護法)のポイント
フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)が施行され、発注者に以下の義務が課されるようになりました。
- 業務内容・報酬額・支払期日などを書面またはメールで明示する義務
- 報酬の支払日は、成果物の受領日から60日以内に設定する義務
- 一方的な報酬減額や受領拒否などの禁止
- ハラスメント対策の体制整備
この法律はフリーランスを守るための制度ですが、まずは自分自身が法律の内容を理解しておくことが大切です。不当な条件を提示された場合は、フリーランス・トラブル110番(第二東京弁護士会運営)に相談できます。
契約書の作り方 3つの方法
1. テンプレートを活用する
ゼロから作成するのが難しい場合は、テンプレートをベースにカスタマイズしましょう。経済産業省やフリーランス協会が業務委託契約書のひな型を公開しています。
2. クラウドサインなどの電子契約サービスを使う
クラウドサイン、freeeサインなどの電子契約サービスには、テンプレート機能があり、そのまま契約締結まで完了できます。印紙代も不要になるのがメリットです。
3. 弁護士にリーガルチェックを依頼する
高額案件や継続取引の場合は、弁護士にリーガルチェックを依頼するのがおすすめです。スポットで3万円〜5万円程度が相場です。フリーランス向けの法律相談サービスも増えています。直接契約のメリットと注意点は以下の記事で解説しています。



契約書チェックで見落としがちなポイント
損害賠償に上限がない
「損害賠償は一切の損害を賠償する」という文言は危険です。報酬額を上限とする」などの制限を設けておかないと、万が一のときに莫大な金額を請求される可能性があります。
競業避止義務が厳しすぎる
「契約終了後○年間、同業他社の仕事を受けてはならない」という条項が入っていることがあります。期間や範囲が広すぎると生活に支障が出るため、交渉して修正しましょう。
偽装請負に該当しないか
業務委託契約なのに、出社時間を指定される、上司の指揮命令を受ける、他の仕事を制限されるなどの場合は「偽装請負」にあたる可能性があります。これは法律違反であり、実態としては労働者と判断されます。


参考になる外部情報
- GMOサイン|フリーランスが結ぶ業務委託契約の種類・注意点と流れ
- レバテックフリーランス|フリーランスと業務委託契約の違い・トラブル防止のコツ
- 厚生労働省こころの耳|フリーランスの方のメンタルヘルスケア
よくある質問(Q&A)
Q. 契約書をクライアントに出すと嫌がられませんか?
まともな取引先であれば、契約書を求めることに嫌な顔はしません。むしろ「しっかりした人だ」と評価されることが多いです。契約書を嫌がるクライアントとは取引自体を再考しましょう。案件獲得の具体的な方法は以下の記事で詳しく解説しています。



Q. メールやチャットのやり取りは契約書の代わりになりますか?
法律上、契約は口頭でも成立しますが、トラブル時に「言った・言わない」になります。メールやチャットの記録は証拠にはなりますが、契約書のような網羅性はありません。書面で残すのがベストです。
Q. 下請法はフリーランスにも適用されますか?
発注者が資本金1,000万円超の法人で、フリーランス(個人事業主)に発注する場合、下請法の適用対象になります。支払い遅延や不当な値引きから保護されます。
Q. 契約期間の途中で辞めたい場合はどうすればいいですか?
契約書に定められた解約条項に従って、所定の期間前に書面で通知するのが基本です。解約条項がない場合でも、合理的な期間を設けて通知し、業務の引き継ぎを行うのがマナーです。
Q. NDA(秘密保持契約)は別途必要ですか?
業務委託契約書の中に秘密保持条項を入れれば、別途NDAを締結する必要はありません。ただし、案件の見積もり段階で機密情報に触れる場合は、先にNDAだけ締結することもあります。


まとめ
フリーランスの契約書は、業務内容・報酬・知的財産権・損害賠償の範囲など10の項目をしっかり盛り込むことが大切です。請負契約と準委任契約の違いを理解し、自分の仕事に合った契約形態を選びましょう。
フリーランス新法の施行により、発注者には書面での条件明示が義務づけられています。自分の権利を守るためにも、法律の内容を把握しておくことが重要です。
「信頼関係があるから大丈夫」は通用しません。むしろ信頼関係を維持するために、契約書で認識を一致させておきましょう。

