「フリーランスには育休がない」と聞いて、出産後の生活に不安を感じている方は多いのではないでしょうか。たしかに、会社員のように法律で守られた育児休業制度はフリーランスには適用されません。
しかし、フリーランスでも使える公的支援制度は複数あり、2026年10月からは新たな国民年金保険料免除制度も始まります。「制度がないから何もできない」ではなく、使える制度を正しく把握して活用することが大切です。
この記事では、フリーランスが育児期間中に利用できる制度と、仕事と育児を両立するために事前に準備しておくべきことを解説します。

フリーランスに育児休業制度が適用されない理由
まず、なぜフリーランスには育休がないのかを整理しておきましょう。
育児休業は「労働者」のための制度
育児・介護休業法に定められた「育児休業」は、企業に雇用される労働者を対象にした制度です。フリーランス(個人事業主)は雇用関係にないため、この法律の対象外となります。
同様に、「育児休業給付金」も雇用保険の被保険者が対象です。フリーランスは雇用保険に加入していないため、育児休業給付金を受け取ることはできません。
会社員との制度比較
- 育児休業:会社員→取得可能 / フリーランス→対象外
- 育児休業給付金:会社員→受給可能(給与の67%→50%)/ フリーランス→対象外
- 社会保険料免除:会社員→育休中免除 / フリーランス→2026年10月から国民年金保険料が免除対象に
- 出産育児一時金:会社員→受給可能 / フリーランス→受給可能(国民健康保険から)
育児休業と育児休業給付金は使えませんが、それ以外の制度は活用できるものがいくつかあります。次の章で詳しく見ていきましょう。フリーランスの保険選びについては以下の記事をチェックしてみてください。

フリーランスが使える出産・育児の公的支援制度
出産育児一時金(50万円)
出産にかかる費用の負担を軽くするための制度で、子ども1人あたり50万円が支給されます。国民健康保険に加入しているフリーランスも対象です。
多くの医療機関では「直接支払制度」を利用でき、出産費用から一時金を差し引いた差額のみを窓口で支払う形になります。
出産手当金は対象外だが…
出産手当金は健康保険(社会保険)の被保険者が対象のため、国民健康保険に加入しているフリーランスは原則として受給できません。
ただし、一部の自治体では独自の給付金や支援金を設けているケースがあります。お住まいの自治体に確認してみる価値はあります。
国民年金保険料の免除(2026年10月開始)
2026年10月から、フリーランスを含む国民年金第1号被保険者を対象に、育児期間中の国民年金保険料免除制度が始まります。これはフリーランスの育児支援における大きな前進です。
- 対象者:国民年金第1号被保険者で、子を養育する父母(養父母含む)
- 免除期間:子が生まれた日から1歳になるまで(原則)
- 所得・休業要件:設けられていない(働いていても申請可能)
- 申請方法:市区町村の窓口で申請
- 年金額への影響:免除期間も保険料を納付したものとして将来の年金額に反映される
従来、フリーランスは出産前後の一定期間(産前産後期間)のみ免除の対象でしたが、新制度では子が1歳になるまで免除期間が大幅に延長されます。月額17,920円(令和8年度)の保険料が最大12か月免除されるのは、経済的に大きな助けになります。
児童手当
0歳〜高校生年代(18歳到達後の最初の3月31日まで)の子どもを養育する方に支給される手当です。2024年10月から制度が大幅に拡充され、所得制限も撤廃されました。フリーランスも会社員も同じ条件で受給できます。
- 3歳未満:月額15,000円(第3子以降は30,000円)
- 3歳〜高校生年代:月額10,000円(第3子以降は30,000円)
申請先はお住まいの市区町村です。出生届の提出と合わせて手続きを済ませておきましょう。
医療費助成制度
子どもの医療費を助成する制度は自治体ごとに異なります。無料〜数百円の自己負担で済む自治体が多いので、居住地の制度を確認しておきましょう。


育児期間中の収入を確保する方法
制度面の支援に加えて、フリーランスが育児期間中の収入をどう確保するかは現実的に大きな課題です。ここでは実践的な備え方を紹介します。
出産前に「貯蓄」を作る
最もシンプルですが最も確実な方法です。最低でも生活費の6か月分、できれば1年分の貯蓄を目標にしましょう。フリーランスは収入が途絶えるリスクがあるため、会社員以上の貯蓄が必要です。老後の備え方については以下の記事で詳しく解説しています。



出産前にストック型の仕事を増やす
育児中でも収入が得られるよう、「時間の切り売り」ではなく「ストック型」の収入源を育てておくのが理想的です。
- ブログやアフィリエイトサイトの収益化
- オンライン講座やデジタルコンテンツの販売
- 写真やイラストのストック販売
- 月額制のコンサルティングやコミュニティ運営
クライアントに事前に相談する
継続案件のクライアントには、出産予定日が近づいたら早めに状況を共有しましょう。休業期間と復帰予定を伝えておくことで、復帰後にスムーズに仕事を再開できる可能性が高まります。
信頼関係のあるクライアントであれば、産後の稼働時間を減らした状態での継続や、復帰後の優先的な発注を約束してくれることもあります。
外注パートナーを見つけておく
自分が休んでいる間に業務を引き継げるパートナーを見つけておくと、クライアントとの関係を維持できます。休業中も窓口だけは自分が担当し、実作業は外注するという方法です。


復帰後の働き方を考える
保活は早めにスタート
フリーランスの保活は会社員以上に準備が必要です。開業届の提出、就労実績の可視化、認可外保育施設の利用など、計画的に進めましょう。
稼働時間を段階的に増やす
産後すぐにフルタイムで復帰するのは、体力的にもメンタル的にも大きな負担になります。最初は週2〜3日、短時間の稼働から始め、子どもの成長に合わせて徐々に稼働時間を増やしていくのが現実的です。
フリーランスならではの強みを活かす
フリーランスは時間と場所を自分でコントロールできるのが最大の強みです。子どもの昼寝時間や就寝後に作業する、保育園の送り迎えの合間に集中して仕事をするなど、自分のライフスタイルに合った働き方を設計できるのはフリーランスならではのメリットです。独立前にやっておくべき準備の全体像は以下の記事でまとめています。



参考になる外部情報
- FREENANCE MAG|2026年10月からは子どもが1歳になるまで国民年金保険料が免除
- and HiPro|フリーランスも育休は取れる?出産・育児で使える公的支援制度
- マネコミ|2026年10月新制度開始 個人事業主・フリーランスの育児支援
よくある質問(Q&A)
Q. 夫(妻)が会社員の場合、扶養に入ったほうが得ですか?
年間の所得が一定額以下であれば、配偶者の扶養に入ることで社会保険料の負担がなくなるメリットがあります。ただし、扶養に入ると国民年金第1号被保険者ではなくなるため、2026年10月開始の保険料免除制度は使えなくなります。どちらが有利かは世帯の収入状況によるので、社会保険労務士やFPに相談するのがおすすめです。
Q. 産後すぐに仕事をしても年金保険料は免除されますか?
2026年10月開始の国民年金保険料免除制度には、休業要件が設けられていません。つまり、育児期間中に働いていても申請すれば免除の対象になります。フリーランスにとっては非常にありがたい設計です。
Q. 育児休業給付金に代わる民間の保険はありますか?
育児休業給付金と同じ性質の民間保険はありませんが、「所得補償保険」や「就業不能保険」で、働けない期間の収入を補填する方法はあります。妊娠前に加入しておく必要があるため、将来的に出産を考えている方は早めに検討してみてください。
Q. フリーランスの男性でも国民年金保険料の免除は受けられますか?
受けられます。2026年10月開始の制度は、子を養育する「父母」が対象です。母親だけでなく父親も申請可能で、養父母も含まれます。
Q. 出産育児一時金の申請手続きはどこで行いますか?
国民健康保険に加入しているフリーランスの場合、お住まいの市区町村の国民健康保険窓口で手続きを行います。直接支払制度を利用する場合は、出産する医療機関の窓口で手続きができます。


まとめ
フリーランスには会社員のような育児休業制度はありませんが、出産育児一時金、児童手当、そして2026年10月開始の国民年金保険料免除制度など、活用できる公的支援は複数あります。
制度の活用に加えて、出産前からの貯蓄、ストック型収入の構築、クライアントとの関係維持など、自分で備えを固めておくことが重要です。
フリーランスだからこそ「自分で守りを固める」意識が大切です。使える制度はフル活用し、計画的に出産・育児に臨みましょう。不安な点は社会保険労務士や自治体の窓口に相談して、一つずつ解消していくのが確実です。

