フリーランスにとって、経費の計上は節税の基本中の基本です。事業に関連する支出を正しく経費として計上すれば、課税所得が下がり、結果的に支払う税金が減ります。しかし、「これは経費にできるのか?」と迷う場面は意外と多いものです。
経費にできるものを知らずに計上漏れしていると、本来払わなくてよい税金を余分に納めていることになります。逆に、プライベートの支出を無理やり経費にしてしまうと、税務調査で否認されるリスクがあります。
この記事では、フリーランスが経費にできるものを勘定科目別に網羅的にまとめました。判断に迷いやすい項目についても具体的に解説しているので、確定申告の際の参考にしてみてください。

経費の判断基準は「事業との関連性」
まず押さえておきたいのが、何を経費にできるかの判断基準です。税法上、経費(必要経費)として認められるのは「事業の売上を得るために直接必要な支出」です。
具体的には、以下の2点を満たしている必要があります。
- 事業活動に関連する支出であること
- 支出の金額が合理的(常識的な範囲)であること
プライベートと事業の両方で使っているもの(家賃・電気代・通信費など)については、「家事按分」として事業に使用している割合のみを経費計上できます。按分比率は合理的な根拠が必要で、たとえば自宅の作業スペースが全体の30%であれば、家賃の30%を経費にするといった計算方法です。
「事業に関連するかどうか微妙なもの」を無理に経費にするのはリスクが伴います。税務調査で否認されると、追徴課税に加えて加算税や延滞税が発生する可能性があります。判断に迷ったら税理士に相談するのが確実です。
勘定科目別・経費にできるもの一覧
ここからは、フリーランスがよく使う勘定科目ごとに、経費にできるものを具体的に見ていきましょう。
通信費
- インターネット回線料金(家事按分あり)
- スマートフォンの通信料(家事按分あり)
- レンタルサーバー代
- ドメイン取得費用
- クラウドストレージの利用料
- Zoom・Slack等のオンラインツール利用料
旅費交通費
- クライアント先への交通費(電車・バス・タクシー)
- 出張時の宿泊費
- 駐車場代(業務で利用した分)
- 高速道路料金(業務で利用した分)
消耗品費
- パソコン(10万円未満なら全額経費、10万円以上は減価償却)
- マウス・キーボード・モニターなどの周辺機器
- プリンター・インク・用紙
- 文房具
- USBメモリ・外付けHDD
地代家賃
- 自宅兼事務所の家賃(家事按分あり)
- コワーキングスペースの月額利用料
- レンタルオフィスの賃料
- 貸し会議室の利用料
水道光熱費
- 電気代(家事按分あり)
- ガス代(業務に使用する場合、家事按分あり)
- 水道代(業務に使用する場合、家事按分あり)

接待交際費
- クライアントとの飲食代
- ビジネス上のお付き合いでの贈答品
- 仕事に関連する懇親会の参加費
- 取引先への手土産代
接待交際費は税務調査でチェックされやすい科目です。「誰と」「どこで」「何の目的で」を記録しておくことが重要です。レシートの裏にメモを残す、会計ソフトの摘要欄に詳細を入力するなどの習慣をつけておくと安心です。
新聞図書費
- 業務に関連する書籍・雑誌
- 有料ニュースサイトの購読料
- 業界専門誌の定期購読
- 電子書籍(業務関連のもの)
研修費・セミナー費
- スキルアップのためのセミナー・講座の受講料
- オンライン学習サービスの月額料金
- 資格取得のための受験料・教材費
- 業界カンファレンスの参加費
外注費
- 業務の一部を他のフリーランスに委託した費用
- デザイン・ライティング等の外注費
- 税理士・弁護士への報酬
広告宣伝費
- 名刺の作成費用
- ポートフォリオサイトの制作費
- SNS広告・リスティング広告の出稿費
- チラシ・パンフレットの印刷費
支払手数料
- 銀行の振込手数料
- クラウドソーシングサイトのシステム手数料
- 決済サービスの手数料
減価償却費
- 10万円以上のパソコン・カメラ・業務用機材
- 自動車(業務使用分を按分)
- ソフトウェア(10万円以上のもの)
10万円以上30万円未満の資産は、青色申告の「少額減価償却資産の特例」を使えば、購入年に一括で経費計上できます。この特例を活用するだけでも、大きな節税効果が得られます。

判断に迷いやすいものの経費可否
「これは経費にしていいの?」と迷いやすい項目について、一つずつ確認していきましょう。
スーツ・ビジネス服
原則として、私服としても着用できる衣類は経費にしにくいのが実情です。ただし、撮影用の衣装やステージ衣装など、業務でしか使用しないことが明確な場合は経費として認められる可能性があります。
カフェでの作業代
打ち合わせで利用したカフェ代は接待交際費として認められます。一人で作業した場合は判断が分かれますが、自宅にWi-Fiがない、打ち合わせの合間の作業場所として利用したなど、業務上の理由が説明できれば経費計上は可能です。
健康診断・人間ドック
個人事業主本人の健康診断費用は、原則として経費にはなりません。ただし、従業員を雇用している場合、従業員分の健康診断費用は福利厚生費として経費計上できます。
自動車関連費用
業務で自動車を使用している場合、ガソリン代・車検費用・自動車税・保険料・駐車場代などを業務使用割合に応じて按分計上できます。走行距離の記録を残しておくと、按分比率の根拠として有効です。
美容院・理髪店
通常の散髪代は経費にはなりません。ただし、YouTuberやモデルなど、見た目が直接業務に関係する職種であれば、業務に必要な範囲で認められるケースもあります。
経費にできるかどうかの最終的な判断は、税務署の見解や個別の事情によって変わることがあります。グレーゾーンのものは税理士に相談するのが最も確実です。
家事按分の計算方法
自宅兼事務所で作業しているフリーランスにとって、家事按分は非常に重要な経費計上テクニックです。
按分比率の決め方
家事按分の比率は、合理的な根拠に基づいて算出する必要があります。よく使われる方法は以下のとおりです。
- 面積比率:自宅の総面積に対する作業スペースの割合。たとえば60平米のうち15平米が作業スペースなら25%
- 時間比率:1日のうち業務に使った時間の割合。8時間作業なら8/24で約33%
- 使用頻度:通信費などで業務利用と私的利用の比率を算出
一般的に、家賃の30%~50%程度を経費計上しているフリーランスが多いです。ただし、根拠のない過大な按分は税務調査で否認されるリスクがあるため、算出根拠を記録しておくことが大切です。

経費管理のコツ
経費を漏れなく計上するためには、日々の管理が欠かせません。確定申告の時期になって慌てないための実践的なコツを紹介します。
レシート・領収書は即日記録
もらったレシートをその日のうちにスマホで撮影し、会計ソフトに取り込む習慣をつけましょう。後回しにすると紛失のリスクが高まり、経費の計上漏れにつながります。
事業用のクレジットカードを使う
事業用の支出は専用のクレジットカードに集約すると、会計ソフトとの連携で自動的に仕訳が作成されます。現金払いを減らすことで記録漏れを防げます。
会計ソフトを活用する
クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワードクラウド、弥生オンラインなど)を使えば、銀行口座やカードの明細を自動で取り込んでくれます。経費管理の手間が大幅に省けるため、まだ導入していない方は検討をおすすめします。
Q&A|経費に関するよくある疑問
Q. レシートを紛失したらどうすればいい?
クレジットカードの利用明細や銀行の取引履歴でも支出の証拠になります。また、出金伝票を作成して「日付・金額・支払先・内容」を記録しておくことで、レシートの代わりとすることも可能です。ただし、あくまで例外的な対応なので、日頃からレシートの管理を徹底しましょう。
Q. 経費の上限はある?
法律上、経費の金額に上限はありません。ただし、売上に対して経費の割合が極端に高いと税務署の目を引きやすくなります。「売上の50%~70%が経費」というのが一般的なフリーランスの目安ですが、業種によって大きく異なります。
Q. 開業前にかかった費用は経費にできる?
開業前に事業準備のためにかかった費用は「開業費」として計上できます。パソコンの購入費、名刺の作成費、スキルアップのための講座費用などが該当します。開業届を提出した事業年度で一括経費にするか、繰延資産として5年間で均等に経費化するか選択可能です。
Q. 家族への支払いは経費にできる?
青色申告者の場合、「青色事業専従者給与」として届出を行えば、家族への給与を経費にできます。ただし、専従者として実際に業務に従事していることが条件であり、形だけの給与は認められません。
まとめ
フリーランスが経費にできるものは、通信費・交通費・家賃・消耗品費・接待交際費など多岐にわたります。判断基準は「事業の売上を得るために必要な支出かどうか」であり、プライベートとの兼用は家事按分で対応します。
経費の計上漏れは直接的な損失につながるため、日々のレシート管理と会計ソフトの活用が大切です。判断に迷うものは国税庁の公式サイトで確認するか、日本税理士会連合会を通じて税理士に相談してみてください。正しい経費管理が、フリーランスの手取りを最大化する第一歩です。

